雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(25話)

和也の家に行くと、
和也のお母さんは車を用意していた。

やけに飛ばす。


着いた先は海だった。


広い砂浜の一角に人だかりが出来ていた。


嫌な予感がした。




和也だ…



そこには冷たく冷えきった和也が寝ていた。


俺は和也を起こそうとした。


和也に近付こうとすると

「今は近付かないでください。
現状保存です」


そう、もうそこにいた和也は息をしていなかった。


死亡推定時刻は3日前の…

手紙を読んだ日だ…


和也はきっと1人だったらこんな事には
ならなかった。

何も出来ない俺が側にいて、
負担になっていた。


俺さえいなかったらきっと
和也は生きていたかもしれない。


その後学校側はイジメがあった事実確認を
始めた。


遅いよ…

もっと俺が大人だったら、助ける手は思いついたかもしれない。
もっと俺に力があったら、
クラスの奴らを黙らせることが出来たかもしれない。
もっと俺に行動力があれば、
和也を早く見つけられたかもしれない…
今までの異変にも敏感に動けたかもしれない。

和也、お前は俺に明るい未来を託した。
だけどそれはここには無い。
ここにいるヤツらは和也の事を気にも
止めてなかった。
和也に手を差し伸べようと言う
大人はいなかった。


俺は母親に相談して、転校する事に決めた。





新しい学校へ行った日。
校門でぶつかってきた誠。
教室で女子にモテていた誠の友達瞬と彰。
俺はこの3人こそ絶対守ってやると、
強くなると心に誓った。






なんで俺は今こんな話を橘にしたんだろうか…


俺は流れてきた涙を拭って橘を見た。


話はつまらなかっただろう、横で寝ているのか…



いや、違う…


泣いている…


「剣司くん、辛かったよね…」


しかも話ちゃんと聞いてたのか…


「まぁでも誠の時には俺じゃなくて
他の奴らはだけどね、戦ってたの。」


そう、あの時俺は暴れただけ。


結局誠の助けにもならなかった。



俺は結局あの時と何も変わってない気がする…



「そんな事ないよ。
剣司くんが誠くんのために
色々調べてたって聞いたよ!
剣司くんが調べてなかったら
誠くんもっと苦しんでたかもしれないよ!」


だと、いいんだけどな…


「和也くんはきっと今でも
剣司くんの事応援してると思うよ。
楽しい学校生活送ってるんだァ〜って
喜んで見てくれてるよ!」


なんか、コイツが言うとホントに
そうなんじゃないかって思えてくるな。


和也から貰ったこのネックレス。
これがある限り俺はどんどん強くなれる気がする。

お前がずっと側にいてくれてる気がする。
だから、俺の事ずっと見守っててくれ。


「和也…」


俺は海に囁いた。

すると、
沖の方から潮風が吹いてきた。

「今のきっと和也くんが
返事してくれたんじゃない?
剣司くん頑張ってね!って!」


かも、知んねぇな。


くそっ、橘!ヘラヘラ笑ってんじゃねぇ!!


俺は何故か横にいた橘の腰に手をかけ、
橘を抱き寄せていた。



あ、そういう事か…


俺は今自分の気持ちが分かった気がする。
なぜこいつにこんな話をしたのか。
なぜ抱き寄せたか。


「橘…俺…」


ヤバい…言葉にするのは難しい。
どうしたらいいんだ…


橘は俺をキョトンとした目で見ている。

言うなら今しかない。

俺は深呼吸して、橘を見つめた。

「橘…俺、お前が好きだ。」

そうだ、俺は知らない間に
コイツが好きだったんだ…