雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(49話)

お父さんが、瞬くんのお母さんを
殺した…?


どういうこと?


お母さんはドアの前でしゃがみ込んだまま
泣いていた。
彰くんがお母さんに気付き、
そっと肩を撫でた。


「コイツは、体の弱ってる俺の母親を
無理矢理襲い、子供を妊娠させ、
俺を産ませてそのまま見殺しにしたんだ!!」


お父さん…


お父さんは後ろのお母さんの様子を見て、
お母さんの頭に手を置いた。


「貴子さん、君は少し休んで居なさい…」


いつもはお父さん、お母さんと呼びあっていた。


今日のお父さんはいつもと違う。


お母さんもそれは感じ取っていた。


「修一さん、私はこの話、ちゃんと聞くべきだと思います。ここにいさせて下さい。」


「ここでは少し窮屈だろう。
リビングに移動しないか。」


お父さんはみんなをリビングに誘導した。


あたしはボタンを全部止め、服を整え、
下に降りた。


1人用のソファにはお父さんが座り、
横にあたしとお母さん。
向かいのソファに剣司くん、誠くん、彰くん。
瞬くんはお父さんの向かいに立っていた。


「俺が悪者って言いたいんだろ!
いいさ、俺は人殺しの話なんか
信じたいとも思わない!!」


溜まってたものを吐き出すように
瞬くんは次々と言葉をぶつけてくる。


「白馬くん。私の話は信じなくていい。
信じるか信じないかは聞いてから
君が決めなさい。」


瞬くんは静かになった。


「貴子さん、大学の時に一緒だった、
五十嵐皐月(いがらし さつき)さんを覚えているか?」


皐月さんはお母さんの友達だった人らしい…


瞬くんの産みの親…


「私は貴子さんと付き合う前は、
皐月さんと関係を持っていたが、
元々体が悪いからと彼女から
別れを告げられた。」


瞬くんは驚いていた。


「関係を持ってたって、、付き合ってたって?」


お父さんは首を縦に振った。


「嘘だ…母さんは見ず知らずのお前に…」


「貴子さんと結婚してから2年ほど、
皐月の体調が悪化してると連絡があった。
そんな日に彼女に呼ばれた。
こんなあたしにも子供を作っておきたい。
1回でいい、子供が出来るか出来ないかは
神様に委ねます、私を抱いて下さいと言われた。」


瞬くんは床に膝を付いた…


「もちろん私は反対した。貴子さんもいるのに
抱く訳にはいかない。そもそも君の身体が持たないと。」


命を落とすかもしれないのに…


「だが、彼女は私しか頼める人が居ないと
どうしてもお願いしたいと、私に頭を下げた。」


お母さんのハンカチを持つ手に力が入った。



「私は、彼女を抱いた。そのまま彼女は
奇跡的に妊娠し、死産や流産を心配されたが
出産まで体を持たせた。」


「母さん…嘘だろ…」


「私はお産に立ち合った。彼女から前もって
お願いされていた事があったからな。
この子を養護施設へ入れる事と、
私の決めた名前をつけてあげて欲しいと。」


皐月さん…命懸けだったんだ。


「出産に置いても彼女の命が尽きるのが先か、
子供が産まれるのが先か。
彼女の頑張ってる姿はホントに命懸けだった。」


「なんでだよ…母さん…俺は…ずっと間違ってたのか…?」


瞬くんはしゃがみ込んだまま床に手を着いた。


片手は目を抑えて…泣いていた…


「彼女の体を見つつ、子供の様子を見つつ、
非常に時間はかかったが、無事
子供は産声をあげて、産まれてきてくれた。」