雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(50話)

「彼女は産まれてきた子供をすぐに抱いた。
彼女は産まれてきた来てくれてありがとうと
泣きながら子供をあやしていた。
親も子供も無事だった事は私も周りの医師達も
喜ばしいことだった。」


そうだったんだ…よかった。


「彼女はこの子供に明(あきら)と名付けると、
明るい子供に育つようにと言われた。」


それで、アキラ…


「だが、子供を離した彼女の体調は
急変した。処置を施したが、彼女は息を引き取った。」


みんな下を向いた。


「私は養護施設へその子を連れていった。
1ヶ月後、様子を見に行った頃には
もう君は白馬家に引き取られたとこだった。
五十嵐家と白馬家は財力が同等で対立していたため、
その跡取りとして欲しかったのだろう。」


瞬くんはまだ頭の整理が出来ていないようだ…


「私に話せるのはここまでだ。あとは君が
私の話を信用するかしないか決めなさい。」


そんな!


「お父さんが悪いわけないじゃん!」


お父さんはため息をついた。


「あかね、1+1は?」


え?


「2…」


「そうだ。その答えが正解の答えだ。」


なんの質問!?


「君達の通う学校には100%正解とされる
答えが1問1問決まっているものだ。
だが人間関係は違う。
例えば、白馬くん。」


「え?」


「30人のクラスの中に、君と黒川くんが居るとする。
ある日クラスでイジメが発覚した。
君達2人以外の28人は犯人は黒川くんだと訴える。
だが、黒川は1人だけ、A君が犯人だと
君に伝えた。さて、ここで白馬くんは、
どちらが正解だと、信じる?」


「……彰が言うなら彰を…信じます。」


「そう、例え28人が黒川くんが犯人だ!
あいつは罪を擦り付けた!いい逃れだ!
などを言われようが、君が信じる黒川くんの
A君だ、という犯人説を信じ、皆と戦うはずだ。
今回もそれと同じだ。」


え?
どういうこと?


「ここにいる人達は私の話しか聞いていない。
だからみんなの正解は私になるかもしれない。
だがしかし、君には2つの答えがある。
君が人殺しだと、母親の恨みだと思って
追いかけいた私の意見と、
生まれてまもなくより、15年育ててくれた
白馬家のみんなの言う意見と。
正解は君が決めるべきだ。ゆっくり考えなさい。」


お父さん…凄い。


お母さんが瞬くんに向かって言った。


「白馬家は五十嵐家を懲らしめようと、
瞬くんに嘘を吹き込んで育てたんじゃないかな?
って聞いてて思いました。」


それも有り得そう…


「俺は、間違った事を追いかけていたのか…」


お父さんは瞬くんの肩に手を置いた。


「君は間違った答えを追っていたのでは無い。
君が正しいと思って進んだ道だ。
君が信じる正しい道は
これから君がゆっくり探して行けばいい。
今急いで答えを出す必要は無い。
焦って出した答えは間違っているかもしれない。
ゆっくり、この先の人生をかけて選んで行けばいい。」


瞬くんは泣いていた。


「君は皐月さんの話をどこまで聞いていた?」


「父さん…殺され…俺の親だと…」


「皐月さんがどんな思いで子供を産もうと決めたのか、
どんな思いで出産に挑んだか、
どんな思いで、産まれてきた君を抱き締めたか…
皐月の人生も考えてあげなさい。」


瞬くんはそれを聞くと、お父さんの前に土下座をした。


「俺は…あかねさんを襲いました……脅迫を繰り返し…俺の、思うように…、すみません、すみません…」


瞬くんは泣きながらお父さんに、何度も謝った。
お父さんは笑顔で頷きながら、
瞬くんの話を聞いた。


「あかね、彼を責める権利は私にはない。
あとは君が正しいと思う処罰を下しなさい。」


お父さん…


あたしは瞬くんの前に立ち、
瞬くんの頬を叩いた。


「今回の事は許せないけど、
瞬くんにも色々訳があったんだよね、
瞬くんが苦しんでるの、
分かってあげられなくてごめんね。」


瞬くんは横に首を振っていた。


すると彰くんが瞬くんに向かって歩いてきた。


「白馬…悪いと思うなら俺が今から言う処罰を受けろ。」


「なんでも言ってくれ…絶交でもなんでも…」


「俺の横にいろ」


瞬くんは思わず顔をあげた。


「悪いって思ってるなら今まで通り俺の横で
罪の意識に苛まれてろ。それと、俺たちは
白馬が今までと同じようにダチでいてくれるって
信じてる。だからとっとと立ち直れ!」


瞬くんは時期に笑顔になっていた。


「さて、そちらはまとまったようですね、
今度はこちらも話をまとめましょう。」

お父さんはそう言うとお母さんの横に座った。


「貴子さん、明日区役所に行ってきてくれませんか?」


お母さんは考え込んだ。

「今何か急ぎの手続きありました?」


お父さんはメガネを外し言った。

「離婚届を1枚貰って来て下さい」



え?


お父さんとお母さん、離婚するの?