雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(58話)

私と修一さんは付き合いだしたものの、
どこか後ろめたさがあった。


修一さんは口数は少ないし、
さっちゃんと居る時とは全然違う。


私も修一さんに話をする事は特になかった。


そのまま夏を迎え、
私は進路に追われていた。


決まってないの多分、私くらい…


先生からも早く決めろと、
催促される。


高校卒業は就職や大学に進学する
人生を左右される選択。


プレッシャーが大きすぎる。


修一さんはきっと大学だろうな…


頭いいし…


夏休みでホントに決めないと…


夏休みに入っても特に決まらず、
気が付けば夏休みも終わりかけ…


花火大会。


中学の頃までは
毎年さっちゃんと行ってたなぁ。


高校1年生の時にはさっちゃんと修一さんと
3人で行ったっけ…


去年はバタバタしてて行けなかったし…


今年は…遊んでる暇ないし…


行けないなぁ。


数日が経ち、花火大会前日、
修一さんが私の家へきた。


何やら大きな小包を持っていた。


修一さんは客間に案内され、
私もそこへ向かった。


修一さんは正座していた。


包みを前に出し、頭を下げた。


「桐島さん。明日これを着て、
私と一緒に花火大会へ、来てください」


いきなり現れた修一さんにもびっくりしたし、
包みもびっくりした。


開けてみると綺麗な桃色の浴衣。
お花がデザインされていた。


この花…見た事ないな…テッポウユリに似てるけど…?


まるで葡萄が割れたかのような、
薄紫の綺麗な花。


1本の枝に連なって、いくつもの花がついていた。


修一さんは顔をあげて説明した。


「この花は桐の花と言います。
桐島さんに似合うようにこの花を
デザインさせて頂きました。」


え?特注?


特注の浴衣って何万もするんじゃ…


「これは貴方にしか似合いません。
是非これを着てください。」


お付き合いして最初のプレゼントがこれ…


さっちゃんと付き合って、
感覚おかしくなったのかな?
いや、さっちゃんもそんなに高価なもの
貰わないか…


仕方ないので、私はその浴衣を来て、
明日の花火大会に参加することにした。