雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(60話)

私と修一さんは花火大会に向かった。


屋台が多く立ち並んでいた。


相変わらず人が多い…


修一さんはそっと私の手を掴んだ。


「これだけ人が多くてははぐれてしまいます。
そばにいて下さい。」


屋台には目もくれず…というか速い!


私は下駄を履いてたので
中々上手く進まない。


それに浴衣だし走る訳にも…


「貴子さん、速すぎましたか?」


え?今!


思わず私は修一さんの顔を見た。


修一さんは顔を逸らして口元に腕を当てた。


「す、すみません。まだ許可も頂いてないのに
勝手に名前でお呼びしてしまって。」


私はクスクスと笑った。


「気にしなくていいですよ!
そのまま名前で呼んで下さい。」


しばらく歩くと人が少ない
茂みに入った。


「修一さん、この浴衣可愛いですね!
気に入りました!」


と、私は両手を広げ修二さんの前で回った。


「喜んで頂けて、何よりです。」


修一さんは優しく微笑んだ。


修一さんは後ろに振り向き、
背を向けたまま、話し出した。


「貴子さん。私は以前まで皐月さんを
愛してました。でも今回浴衣をご用意しようと
思い立った時、貴方の笑顔が頭から離れませんでした。
貴方の浴衣を着た姿を想像し、
貴方のことばかり考えてました。」


修一さん…


修一さんはこちらに振り返り、
私の手を取って目を閉じ、
唇をそっと乗せた。


「貴方には想ってる人がいると聞いてます。
でも、もし良かったら、その人よりも
私を選んで頂けませんか?
………いや、選んで頂きたい!!」


修一さんは私の手をぎゅっと握りしめた。


あれ?私の想い人って何?


ま、まさか…さっちゃん…?


何を言ったの〜!!


「あ、あの…さっちゃんからは
私の好きな人についてなんと聞いてますか…?」


修一さんは顔をあげて、言った。


「かれこれ2年くらいの片想いで、
想いも告げられず、見守ってばかりだと…
でもそんな人より、私は貴方を
幸せに出来るはずです!してみせます!!」


さっちゃん…それって…


私が修一さんの事好きって気付いてたの?


だから私に譲ったの?


しかもこんな誤解招く言い方したの?


修一さんは下を向き、手をおでこに当てて
話し出した。


「付き合い出したと言うのも、
皐月さんから強引に
私を押し付けられたものだと思います。
想ってる人を諦め切れてないのは
分かります。でも私は貴子さんに
愛して欲しいと思っています。」


修一さんです!って言いたいけど
タイミングが…


修一さんすごい真剣に話してくれてるし…


「あ、あの…1ついいですか?」


私は意を決して口を開いた。


修一さんは何ですか?と
笑顔でこちらを向いた。


「さっきから話に出てますが、
私の好きな人って言うのは2年前に
彼女が出来て諦めたんですよ…
修一さんなんですけどね…」


修一さんは驚いた顔をし、
後ろに振り返った。