雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(14話)

誠くんは顔を上げて話し出した…


誠くんはクラスのみんなと仲良くなろうと
始業式の日からみんなの盛り上げ役になっていた。


女子にも人気が高く、
男子のみんなと走り回ったり
落ち着きない生徒の1人であった。


そんなある日、誠くんはある女の子に
告白をされ、返事をする前に、
女の子は誠くんと付き合うと教室で
宣言した。


誠くんは戸惑っていたが、話を受け入れることにした。


その翌日、

その子は誠くんが昨日の話しは無しにしろ、
迷惑だと言われたと教室で宣言した。

周りの目線は冷たくなった。


話を遡れば、剣司くんに殴られた男の子が
その女の子に告白するように進言し、
その後陥れるよう教室で、宣言するように
言われたという。


誠くんは迷惑だなんて言ってないと反論。

既に皆の視線は冷たくなっており、
イジメの対象となっていた。

誠くんは人の心を踏みにじり
何事も無かったかのように
周りにもてはやされている、と。

優しい誠くんへの当てつけじゃないか!!


「森野は、山神の事を気にかけていた。
アイツは独自でそのネタ元を突き止めたのだろう」
彰くんは言った。


それであの騒ぎに…


壁にもたれていた瞬くんが
少し前へ出て言った。

「じゃあ剣司はどこに行ったのでしょうね。」


そうだ!
ひと足先に保健室を出た剣司くん。


まさか、さっきの子の所へ行ったのか、
不安になり、私は剣司くんを探しに行くことにした。



剣司くんは教室にも隣のクラスにも居なかった。



どこだ…


外に出ると屋上に座っている人影が見えた。


あれかも…



屋上へ行くと座り込んでいる剣司くんを見つけた。


「何しに来たんだよ、橘…」


あたしは誠くんから聞いた話を
剣司くんに話した。


「んな事、知ってるよ。
知ってなきゃあんなやつ
殴る理由ねぇだろ…」



剣司くんはシャツの中から
ネックレスを出した。
ネックレスを見つめ、
寂しそうに話し始めた。

「これなダチに貰ったんだよ。
俺その頃今みたいに力も無くてさ…
アイツ、イジメの犯人に説得しに行くって言って
次の日自分で海に飛び込んだんだ…
その三日後…冷たくなったアイツが岸に上がった。」

ネックレスを強く握りしめ、
あたしを睨みつけた。


「だから、力もつけたし、
今ならなんでもできる!!
誠の助けになれる!!なのに…
なんで…何も出来ないんだよ…」


下を向き涙を流しながら言った…


あたしは剣司くんの肩に手を当てた。


「そばにいてあげよ…あたし達にはそれしかできないよ…」


それを聞くと剣司くんは泣き出した。



あたしと剣司くんは保健室に戻った。


だが、既にもぬけの殻。


みんなはどこへ、、、




隣の教室に行くと、
みんなが戻っていた。

瞬くんが教卓に立っている。


「はいは〜い。山神誠くんに不満のある人〜!
この場でちゃんと言って下さいね〜!
暴力は反対です〜!」

いつもの様に清々しく言い放った。
が、瞬くんの目はいつもの優しい眼差しではなく
目の前の標的を狙う獣の目をしていた。


「隣のクラスのやつが何言ってんだよ!
俺らが暴力なんてするわけないだろ!」

犯人はひとりじゃない。恐らくこのクラス
の大半だろう。
そんな中、1人で戦うって言うの?瞬くん!


「ではでは〜☆言い方変えます〜!」


同じ人とは思えない低い声で
周りを威嚇するかのごとく、言い放つ。

「俺らの友達に手出してくれたのは
誰かって聞いてんのよ。
今素直に言ってくれたら1発殴るだけで
許してあげるって言ってんだよ?
さぁ、早く名乗れよ!!」


教室の中が静まり返った。


あたしも瞬くんの一声で
息をするのも忘れるほど圧倒された。


「瞬…ヤバいぞ…アイツ…」


剣司くんが横でそう呟くと
足を少し後ろに下げた…


沈黙を破るように1人の生徒が手を挙げ、

「殴ったのはこの子です。
僕は靴を隠しました。」

周りは息を飲んだ。


名乗った…


瞬くんはそれを聞くと、殴ったとされる子の
前に立ち、
「俺さ、名乗れって言ったの聞こえたよね?」
と言うと、
瞬くんはその子を1発殴った。


「あ、そうだぁ…自己申告じゃないから
もう1発だよね?」

と笑いかけ倒れ混んだ生徒の胸ぐらを掴んで
立ち上がらせた。


「ご、ごめんなさい。もうしませんから。」

その子は泣きながら訴えた。
横の子も助けて欲しいと、
瞬くんにしがみついた。

瞬くんの目つきが、いつもの優しい目付きに
戻った。

「俺は殴りたかった訳じゃないし、
君たちがもうやらないと言うならそれでいい。
だけど次もし、またイジメたりしたら
そこで突っ立ってる彰くんが
君たちボコボコにするから覚悟してね☆」

静かに彰くんがその場に近寄ってきた。

「良かったな、お前ら。
山神は何も言わなかったんだろうが、
心では助けて欲しいと、やめて欲しいと、
願ってたはずだ。
だけどアイツは顔をボロボロにされても
何もない。大丈夫だからと
お前らを責めるようなマネはしなかった。
俺達に事の真相すら話そうとしなかった。
そんなやつをまだ人の心を踏みにじる
悪いやつだと跳ね除ける気か。
俺からすればお前達の方がよほど
人の心が分かってねぇと思うがな!」

彰くんはそういうと、瞬くんの手を下ろさせ、
瞬くんに耳打ちをした。
瞬くんはパッと笑顔になり、
「はーい!みんなー!笑顔で迎えてあげようね〜☆」

手を伸ばしたその先に、
誠くんが静かに教室に踏み込む。
誠くんはこわごわと歩き出した。


「シロっち、くろっち、モーリー、、、
それにタッチーも、、
みんな、、ありがとう…」


クラスの子達は誠くんに寄って、
「ごめんね、また一緒に学校探検隊やろうな、、」
「今度絵教えてって言ってそれっきりだったね、一緒に描こうね!」

それぞれに誠くんへの謝罪の気持ちが出た。

剣司くんはその光景を見て、
「俺にもこんな考えがあったら…
和也…ごめん…」
胸元のペンダントを握りしめ、
涙を流していた。


みんなで教室に戻ると
ゆきちゃんが泣きながらこっちに来た。

「剣司くんごめんね〜!ゆき剣司くんが
犯罪者になったと思って怖かったのぉ〜!

剣司くんは照れながら席に戻った。