雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(22話)

次の日和也は来てなかった。


クラスの奴らは居ないことが気にならない。


2時間目の途中で遅れて和也は登校してきた。



休憩時間にまた俺達は
体育館横で弁当を広げていた。


あれ?


和也の首元…切り傷?


「なぁ、和也。その首どした?」


俺がそういうと、和也は慌てて
首元隠した。

「これ、引っかき傷。ちょっとかきすぎただけだよ。」


にしては長すぎたような。



和也はいつも笑っていたけど、
何か気になるなと
その時には軽くしか思わなかった。


次の日。


和也は来なかった。


放課後になっても姿はなかった。


帰りに俺は職員室に呼び出された。


和也の今日の授業のプリントを
家まで届けて欲しいと先生に頼まれた。


職員室に着いた頃、
担任の先生に女の人がまっさらの上靴を渡していた。
赤色。女の子のものか…



俺は地図のとおりに迷いながらも
和也の家に着いた。

ピンポンを押そうと手を伸ばすと
中から何か物が割れる音がした。


その後もバタバタと何か物が
ひっくり返るような音が続いた。
その音の中に叫び散らす女の人の声が聞こえた。

「なんであたしが悪者の母親に
ならないと行けないの?
そんなに迷惑ばっかりかけて
何がしたいのよ!!」

その声の後聞き覚えのある声がした。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」


和也…


女の人の荒々しさに
俺は足が動かなくなっていた。


怖かったんだ、素直に。


逃げたかったけど逃げ方が分からない。



俺はドアのポストに、プリント類を投げ込み
全速力で走って逃げた。


その日からしばらく和也は学校には来なかった。


毎日ポストにプリントを投げには行くが
ピンポンを押せた日は無かった。


ある日、いつも通り放課後に和也の家へ行くと、

家の前に女の人が立っていた。

あ、上靴を持ってきた人だ。


俺はポストにプリントを入れようとすると、

「あなたね、いつもここに届けてくれてるの。
もう届けなくていいって先生に言ってちょうだい。」


俺は抑えてた言葉を吐き出した。

「和也くんのお母さんですか?
俺、和也くんの友達なんです。
会わせて下さい。」


「いいけど、あの子さっき
お茶をひっくり返して火傷したから
動けないと思うわよ。」


じゃあなんでそこに立ってんだよ…

俺は急いで家の中に入った。


和也はリビングでうずくまっていた。

見ると左手の甲が赤くなっている。

「和也!!大丈夫?
水…早く水当てないと!」

和也は驚いていた。

俺が目の前に居たからだろう。


俺は慌てて水で冷やした。


「和也くんのお母さん!
早く病院に連れて行ってあげてください!!」


俺がそういうと、後ろから和也が俺の腕を引いた。

「剣司くん!僕は大丈夫だから!
こんなのすぐ治るから!」


俺は和也の腕を振り払おうとした。


その時に不意に見えた脇腹が気になった。


和也の脇腹色がおかしかった気がする…


「用は済んだかしら?
そろそろ帰った方がいいんじゃないの?」


俺は気になることは色々あったけど、
その日は帰る事にした。