雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(24話)

放課後、和也は教室に戻ってきた。


手には絆創膏がついていた。

俺達はそのまま帰った。


しかし先生は原因を突き止める訳でもなく、
母親が学校に押しかけることも無かった。


ただ俺は和也を見守ることしか出来なかった。

このままでは和也が怪我だけでは済まなくなる。





しばらく何事もなく数日がすぎ、
俺達は休憩時間だけを楽しみに
毎日学校へ来ていた。


俺はもう友達100人とか言えない…

だって、周りの奴らは誰も信用できない。


ある日の夜和也から電話がかかってきた。

俺はその時風呂で電話には出れず、
母さんが代わりに出た。

後で伝言を聞かされた。

今日はお母さんが居ないから、
今なら出かけられる。
僕はいじめて来てる人分かったから
今から突き止めに行く、と。


俺の母さんは剣司が戻るまで待って欲しい、
話が分からないと言ったそうだが
和也は話を聞かず、そのまま電話を切った。


俺は嫌な予感がした。


慌てて和也の家に向かったが
もちろんそこに和也が居ない。


家の中から母親が出てきて
俺を見つけて一目散に走ってきた。

「あなた!和也の友達なんでしょ?
あの子どこに行ったのよ!」


もう電話からかれこれ1時間は経っている。

こんな時間に誰の家に行ったんだ…


俺は和也のお母さんに、和也の部屋を
見せて欲しいとお願いした。


部屋は片付いていた。

きっとこの部屋に何かヒントがあるはず。



引き出しを探していると、1枚の
封筒が、その中には手紙が入っていた。


俺は和也の母親とその手紙を開けた。


和也のお母さんは泣き崩れ、
その場にしゃがみ込んだ。


「お母さんへ
ちゃんとしない子でごめんなさい。
お母さんをイライラさせてしまってごめんなさい。
勉強ちゃんと出来なくてごめんなさい。
色々叱られたことはあったけど
お母さんの事はずっと好きでした。
いつかお母さんが僕に笑ってくれる日が来るって
ずっと信じてました。
でも僕は最後まで行けない子でした。
お母さんをイライラさせるだけの僕は
お母さんのそばに居ない方がいいと思います。
今まで育ててくれて、ありがとう。
もう1枚は僕の友達の剣司くんに書きました。
学校へ行って森野剣司くんという子に
渡してください。」


「剣司くんへ
剣司くんにこの手紙が渡されたと信じて書きます。
剣司くん!友達って言ってくれてありがとう。
剣司くんが居たから僕毎日楽しかったよ。
みんなに色々されたけど剣司くんが居たから
毎日耐えられた。
でも、僕見ちゃったんだ。
僕の筆箱にカッターの歯が入ってて
指を切ってしまった日、剣司くんの教科書が
ボロボロになってたこと。
僕のそばで僕を守ってくれてたから
僕と同じ目にあってしまったんだと思う。
剣司くんはこんな僕にでも声をかけてくれた。
みんなと仲良くなれるんだよ、剣司くんは!
僕なんかと居ちゃダメなんだ。
剣司くんが笑って楽しい毎日を送れるように
僕はいなくなった方がいいと思う。
電話で悪いことしてた人がって言ったけど
あれは嘘なんだ。悪いのは僕なんだ。
僕が居たからみんな悪い悪魔に呪われたんだ。
僕さえいなかったらお母さんも先生もみんなも
笑って過ごせたはずなんだ。
勝手に居なくなったこと、許してください。
これからは明るい人生を送ってください。」


「和也くんのお母さん。
泣く前に何か出来なかったんですか?
和也が居なくなる前に何か
してあげられなかったんですか?」

和也のお母さんはしゃがみ込んだまま
小さな声で話し出した。

「居なくなると大事だった思い知らされるわね…」


どこか行き場所に心当たりはないかと尋ねると
もしかしたらと机の上の写真立てを指さした。

そこには笑っている和也と、
和也のお母さん。

楽しそうな1枚だ。


その背景の…海か…


もう今は何も手がない。

俺はそのまま帰ることにした。


そこから3日後、


和也のお母さんから電話がなった。


今から連れて行きたいところがあるから
すぐに家に来て欲しいと。