雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(12話)

さてさて…

勉強会も何日間か行われ、テスト本番!


今日から3日間に分けて行われます。


テスト期間は何も無かったので3日間、略〜



テスト期間も最終日!
無事終わり、私はまずまずの手応えを感じていた。


ゆきちゃん達も自信があるようだ。


「早くテスト返って来ないかなぁ〜、
ゆき早くお母さんに見せてあげたい!」


お母さんびっくりするだろうな。


するとマリナちゃんが
「黒川くんのおかげだよね、
みんなで何かお礼しない?」

あ!それ名案!


「んじゃゆきお気に入りのテディベア
あげようかな!大事だからあげたくないけど!」


違う、違うと思う…
そういうお礼では無いかと…



彰くんも校舎から出てきた。


「黒川くん!ゆき達テストいい出来だったから
黒川くんに何かお礼したいと思うんだけど
何がいいかな?」


直接聞くのか…


「終わっただけでまだ返って来てないだろ。
結果的に納得行かなった、では貰ったこっちが
気を遣う。そういうのは結果見てから考えろ。」


相変わらず冷たいわー!無愛想だわー!


みんなが喜んでるんだからいいじゃん!


すると瞬くんがこっち来てヒソヒソ話を始めた。
「テスト返って来る日、最終日の6月30日は
彰の誕生日だよ。パーティとかどうかな?
あ、でも彰その日は学校に来ない日だから
家に押しかけておめでとう!!って
言わなきゃだけど…」


嫌がりそうなんだけど…
ん?休み確定?

ちょっと気になった。


みんな目をキラキラさせながら
コソコソ話し合いが始まっていた。



そして6月30日!!

やったー!全教科98点!!!
小遣い上がる〜!!



ゆきちゃん、答案見て泣いていた。


「ゆき、こんな点数初めて取れた…」

赤点ギリギリが安定らしいが、
今回は全教科50点超え、
数学に関しては70点!!
凄すぎる!!


そりゃ、あたしだったら泣くわ…

カンナちゃん、マリナちゃんも
80点を超えていた。


彰くんホントに凄いな…


あれ?


今日彰くん来てない。


ホントに休む日なんだ…


瞬くんに何かあるの?と尋ねると、
「彰の両親今日命日なんだ…だから墓参り。」

そうなんだ…両親居ないんだ…

「誕生日祝いのケーキを買いに行って、
その帰りに事故にあって御両親とも
即死だったんだって…」

なんか切ない…


聞いただけで泣けてくる…



押しかけて大丈夫かな?




瞬くんの案内で、彰くんの家前着。


二階建ての一軒家。



1階に明かりはついている。



先に瞬くんがベルを鳴らす。



ガチャっ…



「あっきら〜!ハッピーバースデー!」


彰くん腰を抜かして驚いた。


続いて私達もドアの隙間から顔を出す。


「お前ら、何やってんだよ!」


自問自答したいです…
何やってんだろね…



「ゆき達、彰くんのお礼したくて
お誕生日お祝いに来ました〜!!」


彰くんは完全に自宅着、グレーのスウェット…

なんか新鮮。


「まぁ、せっかく来たんだし、
上がっていけよ…なんもねぇぞ。」


廊下を進むと正面にリビング。
真ん中に2人がけのソファがあり、
ローテーブル、絨毯が敷かれていた。


ローテーブルには数枚の写真があり、
彰くんは慌ててまとめて片付けた。


「マリナね、ケーキ作ってきたよ!
みんなで食べよう!」

と、ホールのショートケーキを取り出した。


女子!!


ローソクどこー?」
瞬くんが箱を回しながら探す。

「自作だからローソク用意するの忘れた…」


あーあ…


「よし!彰!イチゴ全部息で飛ばせ!
それを火ってことにしよう!」

「いや、飛ばねぇだろ、俺10歳でもねぇし」


ローソクは無かったことにして、
みんなでケーキを分けて食べた。


食べ終わるとみんなでテレビを見ながら
ワイワイ騒いでいた。


あたしはこういう輪、入りにくいんだよね…


彰くんは立ち上がり、
「俺2階居るから帰る時呼んで」
と、言い残し2階へ上がって行った。


親の命日に迷惑かけたかもと
罪悪感がまだ少しあったので、
あたしも静かに上に上がってみた。


扉の開いた、手前の部屋に、
人影があった。

その部屋には2枚の布団が敷かれ、
彰くんはその2枚をただただ見つめていた。

するとあたしに気付いたようで
背を向けたまま話し始めた。

「今日の話企画したのは白馬か?」

あたしはうん、と答えた。

「あのバカ…もう昔過ぎて落ち込んでないのにな…
無駄に人連れてきやがって…」

やっぱり怒ってたのか…


「俺の両親な、毎日布団片付けて出ていくんだ。
あの日はたまたま仕事の電話が朝にかかってきて、
俺に片付けを頼まれてたんだ。
俺は片付け忘れて、学校に行った。
学校で思い出して、帰ったら怒られるかもしれないって…」

話が止まった…


ごめん、あたしのせいで思い出させてしまったよね…


彰くんはその場に座り込んで強く握り拳を作った。


その手は震えていた。


少しして、上を向いて息を整えて
涙を拭ってこっちに向いた。


「せっかく楽しんでたのに
変な話をしてごめん。」


いや、話したくないのに
話させてごめん。

っていうか家に来てごめん。


「晴れた日には干して、今日だけ
こうやって布団敷いてるんだ。
まだ片付けて無かったの?って
帰ってきて怒られるかもしれないからな。」


と、彰くんは少し笑みを浮かべて、
布団を優しく撫でた。


「そろそろ下に戻るか」

そう言われあたしと彰くんは下の階に降りた。


この話はみんなには言わなくてもいいや…


下の階ではゲーム大会が行われていた。


みんなの楽しそうな姿を見て、彰くんは
笑顔になっていた。

「あきら〜助けて〜!2対1でイジメられてんだけど〜!」

「人の家で勝手にゲーム出すなよ!
あー、ここはこーやって、こーやってだな…」

彰くんも楽しめる誕生日になって良かったね。


終電間際まで盛り上がり、
みんな帰宅する。


瞬くんが途中まで送ってくれた。
「彰、さっき泣いてたんでしょ。
元気にしてくれてありがとう。」

あたしは何もしてない。
彰くんが泣いていても何も出来ず
ただ、立ってるしか出来なかった。


元気にしたのは瞬くん達だよ、と言うと
瞬くんは横に首を振り
「あかねちゃん2階で話してたんでしょ、
彰元々口数少ない上に自分のこと
後回しにするタイプだから
あかねちゃんに話してくれたのは嬉しいよ」

と言って手を振って別れた。