雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(68話)

今日から2学期!!


みんなと会うのは久々な気がする。



教室に入るとゆきちゃん、かんなちゃん、
マリナちゃんのお出迎え。


かんなちゃんとマリナちゃんは
旅行ぶりだもんなぁ。


少し後に彰くん、瞬くん、剣司くん。


剣司くんはどことなくよそよそしい。


あたしも正直言うと恥ずかしいんだけどね…


付き合いだして、学校で会うのは初めてだし…


「あかねちゃんおはよう!
剣司と仲良くできてる?☆」


瞬くんの一言に驚くあたしと剣司くん。


「お、おい!!瞬!!」


剣司くんは恥ずかしそうに
瞬くんに近づく。


周りのみんながソワソワしだした…


男子達は剣司くんを茶化す。


「おい〜お前、まさか橘と付き合ってんのか?」


剣司くんは顔を赤くした。


「マジかよ!ウケるー!
森野と橘がなぁ〜!ハハハ!」


そこまで笑わなくてもいいじゃん…


剣司くんは少々苛立っていた。


するとあたしの左手から
机を叩く音がした。


「お前ら、ケラケラ笑うなよ。
橘と森野が付き合ったからって
お前らに笑う資格なんかねぇよ。
祝ってやれねえのか。」


彰くん…


剣司くんはさらにイラついてた。


「おい!彰!!
今俺が言おうとしたんだよ!!」


すると彰くんが剣司くんに近付いた。


「ここはお前が言うと
周りが付け上がる。
だから1回静めただけだ。」


それを聞くと剣司くんは
クラス中に響く声で言い放つ。


「お前ら!俺のあかねに手出したら
許さねえからな!!」


聞いてて恥ずかしいよォ…


あたしは恥ずかしくて下を向いていた。


剣司くんはあたしの方を見て
ハッとした。


「ご、ごめん…俺、あかねの事
考えてなかった…」


剣司くんは申し訳なさそうに
あたしに言ってきた。


なんか気遣わしちゃったかな…


するとかんなちゃんが
あたしの肩に手を置いた。


「あかね、あかねはまだ恥ずかしいかも
知れないけど、森野にとってはそれだけ嬉しい
事だってことだよ!
ホントに愛されてるね!」


かんなちゃんに言われるとなお、
申し訳なく思うんだけど…


ゆきちゃんもマリナちゃんも
胸張って!!と声をかけてきた。


あたしは意を決して、
みんなに言い放つ…


放とうとしたら…チャイム…


チャイムの馬鹿野郎!!!


なんか複雑な心境で
授業が始まった。

白と黒の子守唄(67話)

ふぅ…


何とか1日で終わった〜。


ゆきちゃんもう机に伏せて動いていない…


「ゆき、もう一生分の夏休みの宿題やった…」


来年もあるけどね…


今は言わないでおこう…


瞬くんは壁にもたれてため息をついた。


「俺さぁ、こんなに頑張らなくてもいいように
出来てるんだよ〜。
もう何もする気力ないよ〜。」


あーはいはい。


学年1位の彰くん、抜いてから言おうね、
そのセリフ…


剣司くんは携帯を見ていた。


「剣司くん何見てるの〜?」


ゆきちゃんが覗き込もうとする。


「ばっ!いきなり横から見るんじゃねぇ!!」


剣司くんは携帯を背中に隠した。


瞬くんはそれを見ると
剣司くんから携帯を奪った。


「あーぁ。あかねちゃんの浴衣姿ねぇ〜」


と言って、瞬くんはゆきちゃんに携帯を見せた。


「お前!バカ!!返せよ!!」


瞬くんはヒラリと交わした。


「あかねちゃん可愛い〜!!」


ゆきちゃんはマジマジと見ていた。


あ!そういえば。


「剣司くんって宿題終わってるの?」


剣司くんは、えっ?って言って
顔を逸らした。


「剣司は宿題やらないよ〜!
いつも俺や彰に見せてもらってるしぃ〜
学校始まってから!☆」


はーー?


手伝ってる場合じゃないじゃん!


今すぐ持って来させないと!!


「あのなぁ〜!それは去年までの話だろ?
今月はとうに終わらせてるよ!!」


え?そうなんだ…


疑ってごめん。


「え?剣司が宿題?夏休み開けたら嵐でも起こるの?」


瞬くんは驚いていた。


剣司くん顔を逸らしたまま言った。


「あぁ!そうだよ!
終わらしとかねぇと、
あかねに呼ばれた時に
すぐに合わせられねぇだろ!!」


あ、そうか…


花火大会もすぐに来てくれたし、
瞬くんの件の時もずっと居てくれた。


「愛の力って凄いんだねぇ〜!!
良かったねぇあかねちゃん!」


ゆきちゃんがあたしに肘を突きながら言ってきた。


あたしが宿題早く終わらすと思って
剣司くんも終わらせたんだ…


「剣司くんって可愛いとこあるよね!」


あ、しまった、思わず口に出しちゃった…


剣司くんは照れながら
「あのなぁ、男は可愛いって言われて
喜ばねぇよ!!あかねの前では
カッコつけられるようになりてぇんだよ!!」
といった。


そういうところが可愛いんだってば、、


あたしと剣司くんと瞬くんは帰ることにした。




そこから3日が経ち、
波乱の夏休みは終わった。


明日から2学期スタート!

白と黒の子守唄(66話)

花火大会から数日、、


結局待ち受けにする勇気は出てなかった。


というより、変なとこ押して
消えたら嫌だもんね…


携帯を見つめていると
着信!!


わぁ、びっくりした…


ん?ゆきちゃん?何の用だろ…


「あかねちゃ〜ん!今日暇〜?」
ゆきちゃん泣いてるの?


あれ、待ってたしか今日…


8月29日…


夏休み、残り3日…


なんかいや〜な予感が…


暇だけど?と伝えると、


「ゆきの宿題手伝ってぇぇえ!!」


あ、やっぱり。


誰か来るかと思ったけどまさかゆきちゃんとは…


そういえば剣司くんは終わってるのかな?


あ、でも何もやらずに持ってきたりして…



あたしはゆきちゃんと待ち合わせの
駅に着いた。


「あかねちゃ〜ん!走って〜!」


ゆきちゃんが着いたかと思えば、
いきなり全力疾走…


ま、まさか…宿題…手付かず??


家に着くと、ゆきちゃんの部屋へ。


あーーー、、、、


真っ白でシワひとつない美しい紙が
机の上に並べられていた…


「あかねちゃん!何からしたらいい?
ゆきになんでも言って〜」


泣いてすがってきた…


いや、待って、あたしでも10日はかかったよ…


これを3日で…


徹夜コース…


なんなら食事以外の時間
全部当てないと無理…


「夏休みの宿題こんなに多いと思わなかったの〜!
もうどうしよう〜!」


どうしようって言われても…


もうこうなったら奥の手。


「ゆきちゃん!そこのプリント
出来るとこだけ書いといて!」


あたしは急いで廊下に出て
電話をかけた。


確か今朝見たはず…


頭のいい暇人を…




30分後…


瞬くん到着〜!


よっしゃ〜!何とかなる!
寝る時間は作れる!


「ゆきちゃ〜ん!こりゃやりすぎだよ〜!
もう少し手付けとかないと…」


さすがの瞬くんもショックを受けた。


わかるよ、その気持ち…


「俺、徹夜は出来ないからね…」


ですよね…


「ねぇあかねちゃん!
剣司くん呼ぶ?」


いや、さすがにそこまでは…


瞬くんがおもむろに携帯を取り出し
電話をかけた。


あれ?何故か低い声で話し出した。


「あ!剣司?今暇だよね?
俺今ねあかねちゃんとゆきちゃんちに
居るんだけどゆきちゃん買い物に行っちゃってさ… あかねちゃんと2人きりだと襲っちゃうかも。
30分は我慢できそうなんだけどね…」


そういうと相手の返事を聞く前に
瞬くんは電話を切った。


なんつーややこしい呼び方してんの!


まーた、誤解させるじゃん瞬くん…




20分程で剣司くんが着いた。


あたし達の居る2階まで
物凄い駆け足で近寄る足音…


扉がバッと開いた。


「瞬!あかねに何してんだ!!」


息を切らし汗だくの剣司くん…


「はぁ〜やっと来た〜!
さぁ剣司はそっちのプリントお願い〜!☆」


「はぁ?なにこれ…
っつか、須藤居るじゃん!!」


そうなの、剣司くんごめんね…


利用されただけなの…


「だって、宿題手伝ってだけじゃ来ないでしょ?
それにもう1回寝てから言いそうだし…
でもさっきの電話だと飛んで来るかと思って!☆」


策士…瞬くん…


剣司くんは瞬くんの胸ぐらを掴み、
床に押し倒した。


「てんめぇ〜!!タクシー代2000円
払えやゴラァ!!!」


うわぁ、タクシーかしかも2000円か…


なんかごめん。


ゆきちゃんが2人のやり取りを見て
痺れを切らした。


「もぅ!!喧嘩はいいから宿題早く手伝ってよぉ!!」


剣司くんと瞬くんは大人しくプリントに向かった。

白と黒の子守唄(65話)

地面に座っていた男の子は
誠くんの声に反応した。


「お兄ちゃ〜ん!」


すると誠くんはこちらに気づいた。


「あ!たっちーとモーリー!
ごめんね!その子僕の弟の源(げん)っていうの!
探してたんだぁ〜」


誠くんは源くんを抱えた。


「2人とも怪我手当してくれたんだね!
ありがとう!」


剣司くんは誠くんのおんぶの姿を見て
笑っていた。


「俺らの中では1番ちいせぇのに
家ではお兄ちゃんか!
頑張れよ!」


剣司くんは誠くんの頭をくしゃっとした。


誠くんは少しよろけたがそのまま家族の方へ歩いて行った。


「そろそろ花火の時間だぜ…」


剣司くんはそういうと、
あたしの腕を掴んで早歩きになった。


「やべぇ、見たいのはここでじゃないんだ!」


少し行くと道が開け、大きな川沿いに出た。


着いたと同時に、花火が空へと打ち上げられた。


いつもはテレビで見ていた景色が
真近に映し出される。


あたしは花火の音、光に圧倒され
言葉が出なくなっていた。


花火に見とれていたあたしの手を、
剣司くんはそっと握りしめていた。


花火が静まった頃、剣司くんはあたしの
顔を見て言った。


「そのピン、なかなか似合ってんじゃん。」


あ、気付いてたんだ…


花火をよく見る為にと前髪をあげるのに
使っていた、うさぎのヘアピン。


「ったく…買ってから全然付けてねぇし、
無くしたのかと思ってマジで焦った…」


剣司くんはそういうとあたしの前髪にある
ピンにそっと触れた。


「買って正解だな!今日マジで可愛い。」


剣司くんはすごく笑顔で言ってくれた。




クライマックスの花火が上がる…


空には無数の花火が連続で
打ち上げられる。


どうしてこんな綺麗なもの
今まで見ようとしなかったんだろ…


中学までは友達も特に無く、
1人で来る勇気は無かったんだと思う。


人が多い、暑い、虫に刺される…
きっとそれはただの言い訳にしか
過ぎなかったんだと思う。


こんなに明るい世界を
あたしは見ようとしなかったのかもしれない。


勇気をくれたみんなに
感謝しないといけないね…


あたしはそっと自分の胸に手を当てた。


「あかね!どうした?
苦しいのか?」


細かな動きで気にしてくれる
剣司くん…


ほんとにこの人を好きになって良かった。


「違うよ、みんなに出逢えた事に、
感謝してた。」


剣司くんはそっとあたしを抱きしめてくれた。


花火も終わり、家に向かう…


家の前に着くと、剣司くんが
あたしの腕を掴み、剣司くんの身体の方へ
引き寄せられた。


「あかね、今日は誘ってくれて
ありがとう。俺すげぇ嬉しかったんだぜ!」


剣司くんの優しい腕の中…
すごく好き…




「あかねちゃ〜ん!おかえり〜!☆」


家の中から瞬くんが出てきた…


忘れてた…


この人がいるかもって可能性…


「おい!瞬!お前こんなとこで
何してんだよ!」


剣司くんはあたしを離し、
瞬くんに駆け寄った。


「いやぁ〜、俺たち異母兄弟ですからね〜、
よく家に遊びに来てるんですよ、ね、あかねちゃん☆」


今のタイミングは出てきて欲しくなかったなぁ〜、


「お前!あかねに手出したらタダじゃ済まないぞ!」


瞬くん真剣な顔になった。


「もうそんな事しないよ…
あかねちゃん悲しませても
何も得はないからね…」


瞬くんはそういうと先に家に入って行った。


いや、帰ってよ、そろそろ!!


「剣司くん、ごめん。
今日はここまででいいよ。」


あたしは家に入ろうとする。


「あ!待って!あかね!!」


あたしは剣司くんの方を振り返った。



カシャッ!!


「せっかく浴衣着てんだもんな!
写真1枚くらい撮っとかねぇと!」


不意打ちで携帯で写真を撮られた…


え?ずるい…自分だけ…


「だったらあたしも!写真撮りたい!!」


すると剣司くんはあたしの横に来て、
肩を抱き寄せた。


「だったらこれで2人で撮ろうぜ!」


あたしは並んで写真を撮った。


すごい、これが自撮りってやつか…


「携帯に送っとくから、
後でちゃんと見とけよ!」


あたしは家に帰ってすぐ写真を見た。


剣司くんが初めて携帯の中にいるのが
感動だった。


あ、、
次に会う時に待ち受けにする方法
聞いとこ…

白と黒の子守唄(64話)

屋台を歩いてると、
おぉ!あれは!
ベビーカステラ!!


前にスーパーの前で売ってた時に
美味しかったの覚えてた。


あれなら歩きながらでも食べれるからね!


「剣司くん!ベビーカステラ買ってくる!」


「いや、俺も着いてくから!」


しかも出来たてのあったかいベビーカステラ


あたしはお財布を出し忘れていたので
カバンに慌てて手を入れた


「お兄ちゃん!まいどあり!」


え?


お会計は剣司くんが済ませてくれた。


「どうせ2人で食うんだから
どっちが出したって一緒だろ!」


まぁ…そう…なのかな?


そして食べる!


美味しぃ〜よォ〜!


花火大会最高!!!


あれ?花火まだ見てないのに…


剣司くんはあたしに顔を寄せてきた。


「なぁ、あかね、1個ちょうだい!」


あたしはいいよ、と、1個剣司くんに渡そうとした。


「あ、、そうじゃなくって…」


あたしは何が言いたかったのか
分からなかった。


「俺の口に入れてくれね?」


剣司くんは照れて言った。


あたしは熱そうなので
少し冷ましてから口に入れてあげた。


「ん…うま!焼きそばの後にこれは合うな。」


と、満足そうに言った。


すると剣司くんはあたしから
ベビーカステラの袋を取り上げた。

「次は俺がやる。」


と言うと、剣司くんは少し冷ましてから
あたしの口にベビーカステラを近づけた。


「ほら、口開けろ。」


あたしは口を開けた。
そこに剣司くんはベビーカステラを入れた。


あれ?コレってもしかして?


俗に言う、あ〜ん!ってやつか!


そうわかると急に恥ずかしくなってきた…


「さっきの焼きそばではさすがにできねぇからな。
これならまだ違和感ねぇだろ。」


いや、違和感はあるよ…


だって食べるだけでこんなに恥ずかしいもん…


あたしが恥ずかしがってると、
剣司くんも顔を赤くして横を向いた。


「いや、、、あの、、
俺だってこんなことするの、初めてなんだからな!」


2人でオドオドしていると、
横からあたしの足に何かがぶつかってきた。


「痛いっ!」


あたしはそのまま転んでしまった。


「大丈夫か!あかね!!」


剣司くんは上半身を起こしてくれた。


ぶつかったのはよく見たら小さな男の子…


幼稚園くらいかな…


この子は膝を擦りむいて泣いていた。


あたしは咄嗟に持っていたハンカチを
その子の膝に巻いてあげた。


親と来てるのかな?


剣司くんと辺りを見渡すが
子供を探してる親は見当たらない。


はぐれた事にも気付いて無いのかな…


しばらくすると
遠くから聞きなれた声が聞こえてきた。


「げん〜!げん〜どこー!!」


見ると誠くんが人を探していた。

白と黒の子守唄(63話)

花火大会当日。


あたしはこの重っ苦しい浴衣に袖を通す…
何を隠そうこの浴衣にはお父さんとお母さんの
思い出が詰まっている。


これが桐の花かぁ…


しかし剣司くんとのデートに着ていくのは
気が引ける…


スーパーで買ったやつとかで
良かった気がする…


まぁ節約か…


あ!そうだ!


あたしは引き出しを開けて
ヘヤピンを出した。


前に剣司くんに買ってもらったヘアピン!
付けて無くすのもったいなくて
なかなか付けれなかったんだよね〜。


家を出て、待ち合わせ場所に向かった。


相変わらず30分前くらいだが、
剣司くんも既に待っていた。


私服…


あ、やっぱり私服の方が良かったか…


剣司くんは近付くあたしに気付くと、
顔を逸らした。


「あかね、、、その浴衣可愛いじゃん、、、」


ありがとうそう言ってくれて。
あたしはすげー重たいのよ…


2人で待ち合わせ場所から
会場に向かった。


人多いよ…


みんなそんなに虫の餌食になりたいのか…


変わってるなぁ…


あたしは屋台に目がいく。


お、美味しそう…


剣司くんは何かを発見した。


「あ!あかね!ちょっとここで待ってて!」


剣司くんはどこかに走って行った。


人混みで置いてかれてもなぁ。


近くの木のところで待つことにした。



しばらくすると剣司くんが何かを持って
帰ってきた。


「ほら!あかね好きだろ?
鉄板で作る焼きそば!」


好き!!


あたしはその場で開けようとした。


「おい!こんなとこで食ったら
浴衣にこぼれるかもしれねぇだろ!」


と言って剣司くんは私の手を引き
どこかへ連れていった。


しばらく歩くと椅子が置いてあった。


「こういうもん食うとこあるから、
こういうとこ探して食うもんだろ!」


知らないもん…


剣司くんはあたしの向かいに座り、
肘をついて横向きに座った。


あたしは焼きそばを食べていた。


美味しぃ〜!!


あれ?剣司くん何も食べてない。


「剣司くん何も食べなくていいの?」


と、聞くと、
「じゃあそれちょっとくれ!」
といった。


え?でもお箸は1膳しかない…


どうしたらいいんだろ…


剣司くんはあたしに手を差し出した。


「その箸貸して!それで食うから!」


あたしはお箸と焼きそばを渡した。


剣司くんは美味しそうに食べてた。


「これ、うんめぇ!!
俺のも買っときゃ良かったな…」


まさかあたしの分しか買ってこないとは
思わなかったもんね…


剣司くんは箸を止めて、
何故か俯いた…


「これじゃ、出来ないじゃん…」


何をだろう…


あたし達は焼きそばを食べ終えて、
他の屋台を見て回った。

白と黒の子守唄(62話)

お母さんの話が終わった…。


普段の生活見てると、
お母さんの方が溺愛かと思ったけど、
お父さんの方が惚れてたんだな…


「それから私たちは2年後結婚したのよ!
そこまではちっさなマンションに2人暮らしでね…
今みたいなこんな広い家に住むなんて
思っても無かったわ!」


でも今の話を聞いて思ったのは、
お父さんがなぜ皐月さんに結婚してから会いに行ったのか、
お母さんはなんでそれを許せたのか…


瞬くんは話を聞きながら下を向いていた。


「俺…正直、あかねちゃんのお父さんの話を聞いた時、
産まれてきて良かったのかとか、
俺が居ていいのかとか思ったりもしたんですが、
お母さんが産んでくれて良かったって、
思えるようになりました。」


お母さんは瞬くんを優しく見つめた。


「私もね最初に聞いた時はびっくりしたけど、
きっと私や修一さんに会わせるために、
さっちゃんが残してくれたんだと思ったのよ。
瞬くんの事、私は大事な家族の1人だと
思っていたいのよ。」


瞬くんはまた泣きそうになっている。


お父さんがリビングに帰ってきた。


「話は終わったか?やけに長かったな。」


お母さんはニタニタ笑いながら
お父さんを見た。


「だって〜お父さんの私への愛を語るには
時間がかかってしまってねぇ〜」


お父さんは今でも惚れてるのかな?


お父さんはお母さんの横に座った。


あれ?顔赤い…


「どんなくだらない話をしたか知らんが、
俺は皐月さんと瞬くんの話で、
正直、見放されると思った。
俺に皐月さんへの未練が無かったといえば
嘘になるからな…」


お母さん優しくお父さんの背中を叩いた。


お父さんは顔をお母さんと反対側に逸らした。


「貴子さん…その…まだ私の横に居てくれて、
………ありがとう。」


やっぱり気になる〜!


「お父さん!お母さんの事どのくらい好きなの?」


お父さんとお母さんは驚いた。


お母さんはワクワクしていた。


お父さんはやれやれと肩を落としていた。


何かを言おうとしたが
お父さんは口に手の甲を当てた。


「………すごく綺麗な、初日の出を見た時…のような…」


何が言いたいの!!


よく分からないじゃん!


お父さんは立ち上がって歩いて行った。
リビングのドアの前に立ち止まった。


「言葉にできないって意味だ!」


といって部屋を出ていった。


照れてるけど、お父さんすごくお母さんの事
好きなんだな…


そんな2人の間にあたしが産まれたのは
凄く幸せな事なのかもしれない!


と、瞬くんはあることに気づいた。


「さっきの話で行くと、さっきの浴衣には
お2人をご結婚に導いた、最初のプレゼントって
意味がありましたよね?」


あ、、、そうなるね…


え?待って!!


あたし剣司くんとの花火大会に
そんなの着ていくの?


お古なのは別にいいけど…


何やら重たい物が肩にのしかかりそうな
そんな浴衣だなと思った。