雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(65話)

地面に座っていた男の子は
誠くんの声に反応した。


「お兄ちゃ〜ん!」


すると誠くんはこちらに気づいた。


「あ!たっちーとモーリー!
ごめんね!その子僕の弟の源(げん)っていうの!
探してたんだぁ〜」


誠くんは源くんを抱えた。


「2人とも怪我手当してくれたんだね!
ありがとう!」


剣司くんは誠くんのおんぶの姿を見て
笑っていた。


「俺らの中では1番ちいせぇのに
家ではお兄ちゃんか!
頑張れよ!」


剣司くんは誠くんの頭をくしゃっとした。


誠くんは少しよろけたがそのまま家族の方へ歩いて行った。


「そろそろ花火の時間だぜ…」


剣司くんはそういうと、
あたしの腕を掴んで早歩きになった。


「やべぇ、見たいのはここでじゃないんだ!」


少し行くと道が開け、大きな川沿いに出た。


着いたと同時に、花火が空へと打ち上げられた。


いつもはテレビで見ていた景色が
真近に映し出される。


あたしは花火の音、光に圧倒され
言葉が出なくなっていた。


花火に見とれていたあたしの手を、
剣司くんはそっと握りしめていた。


花火が静まった頃、剣司くんはあたしの
顔を見て言った。


「そのピン、なかなか似合ってんじゃん。」


あ、気付いてたんだ…


花火をよく見る為にと前髪をあげるのに
使っていた、うさぎのヘアピン。


「ったく…買ってから全然付けてねぇし、
無くしたのかと思ってマジで焦った…」


剣司くんはそういうとあたしの前髪にある
ピンにそっと触れた。


「買って正解だな!今日マジで可愛い。」


剣司くんはすごく笑顔で言ってくれた。




クライマックスの花火が上がる…


空には無数の花火が連続で
打ち上げられる。


どうしてこんな綺麗なもの
今まで見ようとしなかったんだろ…


中学までは友達も特に無く、
1人で来る勇気は無かったんだと思う。


人が多い、暑い、虫に刺される…
きっとそれはただの言い訳にしか
過ぎなかったんだと思う。


こんなに明るい世界を
あたしは見ようとしなかったのかもしれない。


勇気をくれたみんなに
感謝しないといけないね…


あたしはそっと自分の胸に手を当てた。


「あかね!どうした?
苦しいのか?」


細かな動きで気にしてくれる
剣司くん…


ほんとにこの人を好きになって良かった。


「違うよ、みんなに出逢えた事に、
感謝してた。」


剣司くんはそっとあたしを抱きしめてくれた。


花火も終わり、家に向かう…


家の前に着くと、剣司くんが
あたしの腕を掴み、剣司くんの身体の方へ
引き寄せられた。


「あかね、今日は誘ってくれて
ありがとう。俺すげぇ嬉しかったんだぜ!」


剣司くんの優しい腕の中…
すごく好き…




「あかねちゃ〜ん!おかえり〜!☆」


家の中から瞬くんが出てきた…


忘れてた…


この人がいるかもって可能性…


「おい!瞬!お前こんなとこで
何してんだよ!」


剣司くんはあたしを離し、
瞬くんに駆け寄った。


「いやぁ〜、俺たち異母兄弟ですからね〜、
よく家に遊びに来てるんですよ、ね、あかねちゃん☆」


今のタイミングは出てきて欲しくなかったなぁ〜、


「お前!あかねに手出したらタダじゃ済まないぞ!」


瞬くん真剣な顔になった。


「もうそんな事しないよ…
あかねちゃん悲しませても
何も得はないからね…」


瞬くんはそういうと先に家に入って行った。


いや、帰ってよ、そろそろ!!


「剣司くん、ごめん。
今日はここまででいいよ。」


あたしは家に入ろうとする。


「あ!待って!あかね!!」


あたしは剣司くんの方を振り返った。



カシャッ!!


「せっかく浴衣着てんだもんな!
写真1枚くらい撮っとかねぇと!」


不意打ちで携帯で写真を撮られた…


え?ずるい…自分だけ…


「だったらあたしも!写真撮りたい!!」


すると剣司くんはあたしの横に来て、
肩を抱き寄せた。


「だったらこれで2人で撮ろうぜ!」


あたしは並んで写真を撮った。


すごい、これが自撮りってやつか…


「携帯に送っとくから、
後でちゃんと見とけよ!」


あたしは家に帰ってすぐ写真を見た。


剣司くんが初めて携帯の中にいるのが
感動だった。


あ、、
次に会う時に待ち受けにする方法
聞いとこ…