雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(32話)

バスに乗ると、ゆきちゃんがいきなり


「ゆき、誠くんの横に座る〜!」


と言って、誠くんの横に座った。


誠くんの横に座る予定だったのは…剣司くん。


あと、座れてないのは、あたし…


あたしは剣司くんと並んで座る事にした。


剣司くんは窓際で外をじっと見ていた。


あたしは海で疲れてたので
少し寝る事にした。


帰りは他の人達も寝ているのか、
バスの車内はとても静かだった…


すると、間の肘掛に置いていたあたしの手の上に、
剣司くんがそっと手を置いた。


あたしは思わずビックリして、
手を見た。


置かれた剣司くんの手が、
あたしの手を優しく握りしめた。


剣司くんっていつも
優しく温めてくれる。


いつも口悪いとこもあるけど、
実はいい人なんだよね。


あたしはそのまま眠りについた。




駅に着いた。


なんだろ…この、
夢から覚めたな的な現実感…


見慣れた街の風景見ると、
なんか嫌だなぁ…


みんなその場で解散する事になった。


剣司くんはあたしの所へ来て、
黙ってあたしのカバンを持ち上げた。


「送ってくから、このカバン持つよ。」


いや、別にいいのに…


「じゃあ、あたしが剣司くんのカバン持とうか?」


「は?それじゃあ意味ねぇだろ!
2個とも持つよ!」
と剣司くんは笑顔で答え、
両手にカバンを持っていた。


あ、そういえば…


「付き合ってることは
瞬くんや誠くんは知ってるの?」


と言うと、剣司くんは立ち止まって答えた。


「わざわざみんなにこんなこと、
報告しなくていいだろ。」


まぁ、そうか…


なんだろ少しショックというか…
あたしだし、みんなに言いたくないのかな…


「お前だって、小村と仲悪くなったりとか
したくねぇだろ?」


あ、、


こっちは言ってあるんだよね…


って剣司くんに言うの忘れてたな…


「かれんちゃんとゆきちゃん、
マリナちゃんには…その…言いました…」


剣司くんは驚いてあたしの方に振り返った。


「は?マジ?
なんでわざわざ報告したんだよ!
言わなくて良かったのに…」


なんだろ…ところどころ言葉にトゲがあるみたい…


なんだか胸が締め付けられてくる。


海旅行の時の剣司くんとは
別人みたい…


剣司くんはそのままあたしの前を歩いた。


後からついていってたが、
何故かジワジワと涙が出てきた。


剣司くんはチラッと振り返り、
あたしが泣いてる事に気付いた。


「え?泣いてる?
俺、なんか変なこと言ったか?」


そういうと剣司くんは
片手の自分の荷物を下ろして、
あたしを抱きしめた。


「気にいらない事があったなら、
教えてくれよ。」


あたしは剣司くんに言葉をぶつけた。

「報告しなくていいって、
あたしと付き合ってることとか
隠しとかなきゃいけないくらい、
恥ずかしい事なのかな?って。
付き合うってことになったの、
後悔してるのかな?とか…」


そういうと剣司くんは
あたしを強く抱きしめた。

剣司くんのその手は
微かに震えていた。