雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(33話)

剣司くんは何も言わずに
静かにあたしを離した。


そのまま切ない目をして、
言った。


「それ、そのままあかねに返すよ。」


え?どういう意味?


「言えるわけねぇだろ…
無理やり付き合わせてるようなものなのに…」


剣司くんはそのまま下を向いた。


なんでそんなに辛そうなんだろ…


「あかねが俺と付き合うって言ったの、
彰にも言われたからだろ?
俺を好きで付き合った訳でもないのに、
周りに言いふらすなんてできねぇよ!
昨日部屋に戻る時に告られた話聞いて、
俺と彰で、あかねに答えを急かしてしまったんだ
って思ったら、もしかすると
あかねにとって迷惑なんじゃないかと
思ったから、今まで通りにしようと思ったんだ。」


気を遣わせてしまってたのは、
あたしの方だったんだ…


剣司くんを喜ばせてあげようと
選んだ結果だったのに、
落ち込ませていたなんて…


剣司くんはあたしを見つめた。


「俺、あかねの口から、
まだ好きって聞いて無いじゃん…」


そういえば!


あたしは剣司くんの話を受けるとは言ったけど、
自分の気持ちは伝えてなかったんだ!


あたしって最低だな…


あたしは剣司くんから目を逸らした。


剣司くんはあたしの頭の上に手を置いた。


「今、お前、無理にでも言おうとしただろ?」
とあたしに笑って言った。


心見透かされてたような気がする…


「いいよ、待ってるから!
俺も好きになって貰えるように頑張るし、
惚れたらちゃんと言えよ!」


と言うと、剣司くんは恥ずかしくなったのか
いきなり横を向いた。


「と…とにかく!もう帰ろうぜ。」


剣司くんはあたしから離れて
歩いて行こうとする。


可愛い。


そうだね、ちゃんと考えないとね。


ちょっと言ってみたいフレーズ
思い付いちゃった。


「もし、あたしが好きにならなかったら
どうするの?」


剣司くんは慌ててこっちを見た。
あ、ちょっと怒ってるかも…


「は?だったらお前今、
嫌いとか思ってんのかよ!!」


あぁ〜、キレてる気が…


思ってないよと伝えると。


「嫌いじゃないなら、なんでもいい。
可能性はゼロじゃないってわかったから」


剣司くんはおでこに手を当て、
ため息を着いた。


「あのねぇ〜、俺だってあんまり
こういうの慣れてねぇの!
彰の事は気になるし、でもあかねは渡せねぇし、
あかねには嫌われたかと焦ったし、
そう思ったらいきなり泣かれるし…」


あたしだって、慣れてないよ!


確かにあたしも不安だったけど、
剣司くんの事少し分かった気がする。


むしろあたしの方が身勝手。


剣司くんを不安にさせたくないけど、
今好きって言うと、また無理やりとか
思われちゃうかもだし…


あぁ〜難しいよォ〜!!


剣司くんはあたしを見てなにかに気づいた。


「あかね、前髪ゴミついてる。
取るから目閉じて!!」


あたしはビックリして目を閉じた。


すると、唇に…


まただ…


剣司くんの優しいキス…


「また寝不足になるかもな!
でも慣れてもらわないといけないしな。」
舌を出してそういうと、
そのまま帰って行った。

「また明日な!」


長いようで、短いようで
色々あり過ぎた2泊3日の旅行。


剣司くんと彰くん…


夏休みだからしばらく会わなくて
済むかもだけど…


2学期からどうなるんだろ…