雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(56話)

さっちゃんはそのまましばらく
目覚めなかった。


病院に運ばれたが、
ボールが当たった衝撃により
持病が悪化した、との事。


修一さんはベットの横で、
「皐月さん…すみません…」
と繰り返しながら、
皐月さんの手を握り、
うつむいていた。


私はその様子を
ドアの隙間から見ていた。


さっちゃん、目を開けて、
修一さんが見守っているから、って
心の中でさっちゃんに言ってたの。


しばらくして目を覚ましたものの、
さっちゃんは入院する事になった。


修一さんは毎日病院に通っていた。


私は修一さんが居るのを見ると、
病室には入らず、
そのまま帰っていた。


ある日、私の携帯に電話。
修一さんからだった。


”今から皐月さんの病室に来てください”


修一さんはそういうと電話を切った。


私が病室に行くと、さっちゃんの横には
修一さんが座っていた。


さっちゃんが私を見ながら
こう言った。


「貴子さん、修一さんの彼女になってください。」


いきなり?


修一さんも聞いてなかったのか
驚いた様子だった。


さっちゃんの話に私は言い返すことはなかったけど、
その時はさすがに反論した。


「さっちゃんと修一さんすごく仲良いじゃない!
そんな…急に私とだなんて…
修一さん困っちゃうよ!」


さっちゃんは笑顔のままだった。


「私より、貴子さんとの方が
幸せになれます。
私は多分修一さんより、
先に天国へ行く事になりそうなの。
修一さんの幸せを
貴子さんに託したいと思うの。」


修一さんは窓際に立ち、空を眺めていた。


「さっちゃんは良くても
修一さんの気持ちはどうなるの?
そんなのさっちゃんの勝手すぎる!」


そうよ、修一さんは戸惑っていた。


急にそんな話をされたって
ほいそれと気持ちは変わるものじゃない!
第一、あんなにさっちゃんの事を
思ってたのに…私はそれを見ていたいのに…。


修一さんは何も言わない…


私はさっちゃんの身勝手さに
付き合いきれなかった。


私は返事もせず、病室を後にした。


確かに私は修一さんに惚れていた。
だけど、もうそんな気持ち諦めた!


だって、2人の姿を見るのが好きだったから…


私はそこから2人と距離を置いた。


修一さんとは学校で会うが、
会話をすることはなかった。


もうさっちゃんの病室に行ってないのかな…


さっちゃんの様子は気になるけど
会いに行きたくは無く、
気付けば、高校3年生になっていた。