雪乃小説館

不定期で更新します!現在は白と黒の子守唄を更新してます。

白と黒の子守唄(61話)

「でしたら、私が皐月さんとお付き合いを初めて
諦めていた、という事でしょうか?」


修一さんは何やらじっくり考えていた。


改めて言われるとなんだか恥ずかしくなった。


あ、じゃなくて!


「いや、でももうそれは過去の話で…
私はさっちゃんが幸せになってくれるならと
全然気にならなかったし、
さっちゃんに修一さん取られて悔しいとか
思った事ないです!
だからさっちゃんを恨んでとか
修一さんを恨んでとか、そういうのは全く…」


話してる途中に私は修一さんに抱きしめられた。


「皐月さんはお優しい方です。
でも貴子さんもお優しい方です。
だからこそ、皐月さんは
貴方に私を託したんだと思います。
私は貴子さんの友達思いなところ、
貴子さんの自分より他人を優先するところ。
そんなとこにきっと私は惚れてしまったのですね。」


修一さん…


私は修一さんの背中をつかみ、
顔をあげて言った。


「浴衣…ホントはすごく嬉しかったです。
私に似合うか自信はなかったですが…」


修一さんは私の頭を撫でた。


「思った通り、お似合いですよ。
可愛い貴子さんには」


私は恥ずかしくて顔を埋めた。


修一さんは私を少し離し、
顎を持ち上げ、そっと唇を重ねた。


「貴子さん、卒業後私は就職します。
貴子さん、もしまだ進路が決まってないのなら…」


修一さんは片膝をついて、
私の左手をとり、唇を当てた。


「貴方には私の残りの人生を全て捧げます。
私と一緒に居てください。」


これって?まさか?


いや、そんなはずはない…よね。


一瞬プロボーズかと思った…


「いきなり何言うんですかー?
まるでプロボーズかと思って
びっくりしたじゃないですかー?」


修一さんはその場で立ち上がり下を向いたまま
話した。
顔は真っ赤になっていた。


「まるで…じゃなくて、その、、、
プロボーズ…したんですが…」


嘘っ!?


「ど、どうしたんですか…いきなりそんな…」


私は開いた口が塞がらなくなった。


「まだ進路が決まっていないと悩んでいたので、
付き合ってる者としては、このような道を
指し示すのも役割かと…思いますし…」


修一さんはずっと顔が上げられてない。


「高校卒業の頃は給料もまだまだ足りないですし、
貴子さんを幸せに出来る保証なんてありませんし、
貴子さんにはもしかするとこの先いい男性に
出会うかもしれませんし…」


修一さん…


そこまで思っても、
私にプロボーズして下さったんですね…


私は嬉しくなった。


「もし、私に他にいい男性が現れたら
どうしましょう…」


ちょっとふざけてみた…


修一さんは自分の胸に手を当て、
力いっぱいに言い放った。


「その時には、私は貴子さんに愛を示します。
他の男ではなく、私が貴子さんを1番愛していると!!」


どうやって…?


「まぁでも修一さんとなら
いい家庭が築ける気がします。
私を大事にしてくださいね。」


修一さんはほっとした表情で
私の左手をまた取った。


「薬指…今は何もつけてあげられませんが、
きっと貴子さんに見合ったいいものを
差し上げます。
他の誰にも付けさせてはいけませんよ。」


そういうと修一さんはまたそっと
唇を重ねた。